井の中の蛙、インドへ

インドで学んだことを書いていきます。よろしくお願いします!

東京五輪1年後へ。悩ましい代表選考(特に柔道)。

先日、3月30日に東京オリンピックの日程が2021723日開催に決定しました。

2020年秋や2021年春にするという案もあり、事態が不透明だっただけに、日程が固まったのは一安心ですね。

 

ここで、各競技団体にとって一番の悩みどころは代表選考をどうするか、ですね。

4年に一度のオリンピックに出られる人は、大変限られているし、その選考はどの競技も熾烈を極めます。僕は個人的に柔道経験があるので柔道の選考はずっと追っていたのですが、大変悩ましい問題が生じたと感じています。

 

毎回のオリンピックでメダルを量産する柔道。その代表選考は毎回想像を絶するハイレベルなものとなります。多くの選手が口にするのが、オリンピックは特別、というもの。世界選手権やグランドスラムという国際大会が毎年行われ、その年の世界チャンピオンは決まるのですが、2019年の世界選手権で優勝した日本人選手は喜びに浸るのもつかの間、みな「東京オリンピック」という目標を掲げます。

また、井上監督も「金メダルを取れるかどうかという観点で調整をしている」という旨の発言をしております。発祥国として金メダルを期待されるプレッシャーをずっしりと感じている様子がわかります。しかし、世界選手権で勝てたからといってオリンピックで勝てるわけではないことは中村美里選手、海老沼匡選手、長瀬貴規選手など、多くのケースで見られました。オリンピックの重みはどの選手にとっても段違いに重いです。

 

日本では競技人口が16万人いると言われ、大変選手層が厚いのが日本柔道界です。そして、どの選手も厳しい減量や国際大会をいくつも乗り越えて世界ランキングを男子は22位以内女子は14位以内にキープしていないといけないという厳しい世界です。毎年有望な選手が頭角を顕すし、長期間の怪我で戦線離脱をするとランキング上位復帰は相当難しくなります。

各選手が心身のレベルを極限状態にもっていって戦うため、選手の入れ替わりは大変激しいです。

リオオリンピックでは、60kg級の永山竜樹選手と高遠直寿選手、66キロ級では海老沼匡選手と阿部一二三選手、73キロ級では大野将平選手、中矢力選手、秋本啓之選手、100キロ級では羽賀龍之介選手とウルフアロン選手、100キロ超級では原沢久義選手と七戸龍選手、女子48キロ級では近藤亜美選手と浅見八瑠奈選手、52キロ級では中村美里選手と志々目愛選手、70キロ級の新井千鶴選手と田知本遥選手、78キロ超級の山部佳苗選手と田知本愛選手など、世界トップクラスの選手たちがしのぎを削り、代表が決定しました。

 

リオオリンピックでは阿部一二三選手やウルフ選手など勢いのある若手が台頭するのを振り切って代表に内定した選手もいました。決め手はそれまでの国際大会での実績などを勘案するというものでした。

2017年以降は多くのオリンピック内定者が日本のトップ選手の座を若手に譲り始めました。

 

このような熾烈な争いを考慮して、全日本柔道連盟東京オリンピックという負けられない大会に向けて、選考の基準のできる限りの明確化と外国人対策のための早期化を決めたのでした。

 

このような流れを受けて、2019年の大阪のグランドスラムや世界選手権、選抜体重別など、複数の大会を選考のマイルストーンとして発表し、それに則って代表が厳正に決定されました。選考では、国際大会での成績、直接対決の結果を考慮して、強化委員会の3分の2の賛成多数でやっと内定という、精密な審査がされます。先日、227日に14階級中13階級で代表の内定が出揃ったばかりでした。

この代表発表の際の井上監督の涙は、落選した選手のレベルの高さへの敬意と苦渋の決断を迫られる心労を示すものでした。

動画は[https://www.youtube.com/watch?v=sPBoxpiCF5Q&t=1437s]

 

4年間の激闘に終止符が打たれ、後はチーム日本で一丸となって戦う、という状況になったところで、この度のコロナ騒動が大規模化し、最終的にオリンピックの1年延期が決められたのでした。

 

再選考となると、代表内定済みの選手と落選していた選手とでは、気持ちの切り替えの面で大きな差があります。落選した選手には奇跡的にもう一度チャンスが来たという前向きな気持ちが生まれますし、代表選手には4年をかけて一度手にした強力な資格を剥奪されるという、大きな心理的ビハインドがあります。まだ決まっていない66キロ級はもとより、高藤選手(26)と永山選手(24)、橋本壮市選手(28)と大野将平選手(28)など、選考が難航した複数の階級で代表選手が入れ替わってもおかしくないと思われます。

 

リオオリンピック以降、疑義を挟まない選考を目指して今回のような選考とした全柔連の方々の苦心を思うと、新たな選考をし直すというのは想像を絶する苦悩だとは思われます。しかし、120日後から480日後となった大会に関して、選考を変えないというのは、実力を反映していないため、今までの選考の方針から逸れてしまうものと思われます。代表内定した選手が再び代表になる可能性は十分にありますし、疑義を挟まない選考というのがここ数回のオリンピックでの課題の一つでもありました。

実際、2012年のロンドンオリンピックの選考では浅見八瑠奈選手がそれまでの世界選手権で2回優勝していたものの、緊張のため体重別の「1週間前から寝られなかった」という発言が考慮されてオリンピックの代表が福見友子選手に決定した(福見選手はロンドンオリンピックではメダルを獲得できずに終了)、という出来事や、リオオリンピック前の2016年の選抜体重別で海老沼匡選手が当時大学1年生であった阿部一二三選手に惨敗したものの、国際大会での実績を考慮されて内定した(海老沼選手は銅メダルを獲得)、という出来事がありました。五輪の選手選考の透明化の流れは来ており、これは柔道に限らず、競泳や陸上など、多くの競技で話題となっていることでした。

 

今回、オリンピックが1年という大幅な期間延期になったことで、全柔連の判断に注目が集まります。

 

写真は日本人の知り合いに紹介をいただいたインドの柔道アカデミーの看板です。ハリヤナ州のグルガオンという街の離れに、地下の道場を設けて練習しています。練習は週6日、うち2日は二部練です。参加した時は警察と軍隊の人が多く、20代前半の人ばかりでした。国際大会経験者もちらほら。練習はかなりハードです。ロックダウンが明けたら稽古に行く予定です。

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インドの柔道人口は6000人程度らしいですが、総じて日本人より体格が良い上に、警察・軍関係者が多く、レベルは相当高いです。