井の中の蛙、インドへ

インドで学んだことを書いていきます。よろしくお願いします!

労働者保護のインド、日本と違う景色

1、最近のコロナの状況

 ついに5月に突入しました。316日頃から僕の会社は自宅勤務を取り入れており、1ヶ月半ひたすら家にこもるという静かな生活を送っていました。一方で世界では歴史的な動きが日々起きており、とても追いきれるものではありません。本日5月1日にロックダウンの延長がされましたが、これは次の記事で紹介します。

 世界ではコロナウィルスの累計感染者数が330万人、死者は23.5万人。インドでは202051日時点で累計感染者数は35,365人、死者は1,152人。日本では累計感染者数が14,516人、死者が466人となっています。

ニューヨークでは街の人にランダムで検査をしたところ20%が抗体を持っていたというニュースもあります。カウントされていない感染者も入れると世界で1000万人近くいるとみて良いでしょう。

 

2、最近の世界とインドのニュースピックアップ

 2020421アメリカの原油価格が初のマイナス水準まで低下しました。これは北米で原油の需要が未曾有なレベルまで減り、原油の貯蔵設備がどこも限界に達していることを物語っています。北米に限らず中東やロシアでも状況は似ており、商業活動が正常化しつつある中国が国家備蓄を増やすべく世界各国の原油を買いましていることが確認されています。

 

 中小零細企業(MSME)にとっては大変大きな打撃が降りかかっています。中央銀行と商業銀行、投資銀行が総出で中小企業への融資を確保するような政策が望まれます。

 

 内閣府は、破産倒産法(Insolvency and Bankruptcy Code)の適用による新たな企業の倒産を今後6ヶ月は発生させないという方向で調整中とのことです。首相の同意が得られれば正式に通達や法改正がなされる見込みです。インドでは2016年に破産倒産法が整備されて以降、倒産案件を処理する裁判所のパンクが問題になっていたところではありました。1ヶ月以上の完全ロックダウンで資金繰りが滞った中小企業は異次元の数に上るはずです。倒産手続きを6ヶ月間裁判所が受理しないという方策は日本では考えられない思い切った政策です。しかし、それくらいしないと生き残りをかけた企業が裁判所に殺到して一気に10年分ほどの倒産案件が降りかかって来ていたことでしょう。中小企業が6ヶ月でなんとか復活することを祈るのみです。

 

 インド政府は中国から拠点を移そうとする企業に対して一定のインセンティブを付与する計画を立案中です。COVID-19で、製造拠点が中国1つであった企業が、部品の納入などを受けられずに製造が中断されたことを受けて、多くの企業が中国からの拠点の移動を検討中という流れを受けて、インド政府が拠点の誘致をしている状態です。自社の維持だけで大変な企業が多い中、インド進出までするとなると大変ですが、インセンティブ次第ではインド進出の加速が見込まれる可能性もあります。*1

 

 2020424日、ムンバイITAT(国税上訴裁判所のムンバイ支部)が人道主義に則った判断をしました。ITATとは、国税関係の訴訟の第2審です。今回はロックダウン中の最中、ITATの歴史上初となるビデオ会議による弁論期日が設けられました。Pandhes Infracon Pvt Ltdという会社が会計年度 2009-10において法人税の未納が3480万ルピーあるとして税務当局から指摘を受けていた件について、利息と追徴課税分を含めた6470万ルピーが課せられていました。会社は約半額を支払ったものの、利息と追徴課税分である2910万ルピーに関しては支払いができない状態となり、ロックダウンに突入しました。しかし、ここで、2020320日に、労働省からの通達がなされ、COVID-19の中従業員を解雇または減給しないことが指示されました。これを受けて会社は残額を従業員への支払いに充てるため、徴税手続きを停止するようITATに控訴した、というものでした。ITATはこれを受け入れて、残高を回収するためのGarnishee Procedure(所得税法2263項の債権者代位権行使手続き)を停止して、従業員への支払いに充てるよう判断をしたのでした。ロックダウン中で、従業員を解雇しないよう求める政府通達がなされていたこと、徴税額の元本は支払われていたこと、Vivad se Vishwas Scheme(一定の条件のもと税金の元本を全て支払ったら利息や追徴分を免除する等の紛争早期解決制度)を利用できたことなど、特殊事情が重なったことから判例としての汎用性は低いですが、労働者の人権を重んじるインドらしい事案として大変興味深いものでした。*2

 関税の支払いの自動化、輸出業者が用いるShipping Bill(輸出明細書)のオンラインでの訂正・申告が可能になりました。Shipping Billとは、輸出業者が、GST(Goods and Services Tax, 日本でいう消費税)を支払うために申告をする必要がある輸出取引の明細書です。これの訂正・申告をオンラインでできるようにしたことです。ロックダウンを機にインドは政府レベルでのIT化を加速させています。*3

 

 423-25日でNFL(National Football League, アメリカのプロアメフトリーグ)のドラフトが行われ、255人が超人の祭典に加わりました。歴史上初となる完全リモートでのドラフト実施は、将来のNFLのビジネスモデルへの変更を迫るものとなるでしょう。LSUJoe Burrow, AlabamaToa Tagovailoa, OregonJustin Herbert, OklahomaJalen Hurtsが世界最強を巡ってプロの世界で衝突するのかと思うと目が離せません。

 

*1[https://economictimes.indiatimes.com/news/company/corporate-trends/red-carpet-for-firms-looking-to-ditch-china/articleshow/75280859.cms]

*2[https://itatonline.org/archives/wp-content/uploads/Pandhes-Infracon-Stay-order.pdf]

*3[https://www.cbic.gov.in/resources/htdocs-cbec/customs/cs-circulars/cs-circulars-2020/Circular-No-22-2020.pdf]