インド企業の株式譲渡とインドの印紙税法(Indian Stamp Act) に迫る
1、最近のインドの社会経済の状況:
まずはコロナウィルスの感染状況からです。世界全体で累計患者数が295万人、死者20万人。インド全土で感染者数は31360人、死者は1008人。日本では感染者数13422人、死者376人。(4月28日12時時点)。
3月25日から始まった、世界史上最大のインド全土ロックダウンは1ヶ月以上経過しました。コロナウィルスはロックダウン中も猛威を振るっており、1ヶ月のロックダウンを経た今も、患者数は高止まり状態です。
日本は医療崩壊しているという声を聞きますが、特定感染症に特化した病院のキャパシティは超えたものの、それ以外の病院のキャパシティを考えるとまだ重症患者を治療する施設は整っているという状態らしいです。イタリアのような爆発的な死者の数(4月28日時点で27359人)は生じないものと考えられます。また、日本では検査数が異常に少ないという状況を差し引いても感染率は非常に低いらしいです。これには多くの感染症研究者や政府職員が疑問を持っているようです。日本は平均的な衛生環境が良いのと、疫病への周知が初等教育の過程で浸透していることなどが影響しているのだろうと僕は見ていますが、真相はわかりません。
ワクチンができるまで1年から1年半ほどかかるとのことで、そまでは今までのような経済活動はできず、何かしらの形で制限された形態になることは間違いありません。これからは、インド経済も含めて全世界の経済が未曾有の停滞を迫られるものと考えられます。
IMF(国際通貨基金)によると、2020年の世界経済の成長率は3%まで落ち込む見込みとのことです。これはCOVID-19が長期化することでさらに低くなるとも予測されています。しかし、一方で、COVID-19明けには成長率5.8%程度に回復するとの見通しも同時にたてられています。
インドでは4月20日より、一部の経済活動の再開が許されます。しかし、これは、極めて限定された状態にとどまるもので、経済的な停滞はまだまだ続く見込みです。
急迫の危機にさらされているのが、飲食業、ホテル業、旅行業、航空業、などと言われていますが、他の業界も、基本的に楽観視はできない状況です。3月初旬から約2ヶ月ほどで世界経済は瞬く間に曇りから土砂降りの大嵐に変わったような急変ぶりです。リーマンショック級の不況を超えて1920年頃の世界恐慌レベルの不況が訪れるという予測もあります。
今の状況で企業ができることは、とにかくキャッシュを確保すること、資金の流動性を確保すること、固定費(人件費や不動産費用等)を削る交渉等を可能な限り進めること、です。身を切る選択も生じるかと思いますが、頑張りましょう。明けない夜はないのです。僕も、今いる業界の知識経験を少しでも増やす、ということにまずは注力します。
2、本日はインドの印紙税法(The Indian Stamp Act, 1899)という法律に照準を当ててみます。
インド居住者も非居住者も、インドで発行された証券の発行や譲渡の際、印紙税法に従って印紙税(Stamp Duty)を支払う必要があります。これは、法律の成立年度が1899年であることからも分かる通り、イギリスの植民地時代から続く制度です。
印紙税とは、インドの公的な機関による承認を経る取引などの、法定された一定の取引に関して課される税金で、印紙の形で支払いがなされるもの、といえるでしょう。
課税要件や課税額、支払い方法等はインド印紙税法(The Indian Stamp Act, 1899)に定められています。印紙税の徴収の業務は基本的に州政府に委ねられており、管轄の州政府が決まっています。例えば、株式や社債の譲渡証明書に関しては会社が登記された州の印紙税務当局で印紙税の支払いをするのが原則です。
印紙を添付された資料の提出を求める規定が会社法(The Companies Act, 2013)や外国為替管理法(The Foreign Exchange Management Act, 1999), 所得税法(The Income Tax Act, 1961)など、随所で出てくるので、その際にはこの印紙税法を確認の上、管轄の印紙税務当局に向かいましょう。印紙の添付が求められる資料は各法令で細かく定められており(Schedule I)、株式譲渡証明書や社債譲渡証明書、会社定款、為替取引証明書など、幅広いです。
3、インド印紙税法の用語
インド法には通常の英語と用法の異なる用語が多々登場するのですが、印紙税法も例外ではありません。注意した方が良い用語をピックアップしてみました。
・Adhesive Stamp(2条(26)など):粘着性のシールによって貼り付けられた印紙。日本でも良く用いられる切手のような印紙のことといってよいでしょう。
・Execute(2条(12)):署名をすること。他の英語でいう’sign’や’signature’と同じような用語です。
Impressed stamp(2条(13)):押印された印紙。ラベルが権限を持った当局の者によって押印されたり、浮き彫りにされたり(enbossed)彫りつけられたり(engraved)したもの。
・Instrument(2条(14)):権利や義務が創設され、取引され、制限され、延長され、消滅させられ、もしくは記録されている資料またはそのように称されている全ての資料。日本語でいう「証書」といえるでしょう。
・Stamp(2条(26)):州政府によって権限を与えられた機関や役人によって添付された印やシール、承認で、これには貼り付けられた印紙(adhesive stamp)や、押印された印紙(impressed stamp)が含まれます。これはこの法律のもとで課税される印紙税回収のために利用されるものです。
・Consideration:取引の対価。英米法では良く見かける法律用語です。印紙税の価格はconsideration のxx%などと規定されたりします。
・Schedule:別表。英米法ではよく見かける法律用語ですが、初見では何のことかわからないこととなります。
・Rupee:インドの通貨単位。1 rupeeは約1.5円です。ヒンディー語だと「 रुपया」と表記し、rupayaと発音します。
・Paisa (複数形はPaise) : 1/100ルピー。 通常は1950年以降に導入された新paisaのことを指します。ヒンディー語だと「पैसा」と表記します。インドでは、昔の名残で、銀行取引や会社の財務諸表の作成等で全て小数点以下2桁まで表示がありますが、これはpaisaの文化の名残なのです。
・Naya Paisa(複数形はNaye Paise):1950年より導入された通過単位です。それまでは1 paisaが1/64 rupeeだったのですが、1950年より1 paisa が1/100 rupee となりました。naya(नया)はnew,新しいと言う意味です。現在ではpaisaというとnaya paisaのことを指します。
・Anna:インドの通貨単位。1 annaは1/16 rupee, または6.25paiseにあたります。ヒンディー語だと「आना」と表記します。
4、株式譲渡の手続き概要
インド子会社の株式を日本法人やタイ法人、シンガポール法人等で持つことは日本企業の場合よくあることです。組織再編などでインド企業の株式を売買することが何かと発生することになることでしょう。大まかな手続きの一例をまとめると、以下のようになります(インドの非上場企業の場合)。あくまで一例で、企業の状況により手続きは多少異なります。
海外からインド企業の株式を取引する場合、FEMAや所得税法、会社法、そしてこれらの関連規則の定めに従って株式評価をして、株式を公正な価格で取引する必要があり、この際には勅許会計士(Chartered Accountant)の承認が必要となることも多いです。インド企業の株式の取引や発行をご検討の際には以下のような手続きを全て一括してくれるような会計事務所、銀行、法律事務所等にお願いをするのが良いでしょう。
(1)、株式評価の実施
(2)、当事者間で譲渡の合意(Share transfer agreement) に両者署名
(3)、譲渡証明(Share Transfer Deed, 通常はForm SH-4) 記入、当事者間で対価の支払いを完了。両者署名(インド国外での署名の場合)
(4)、譲渡証明を印紙税務当局に提出(外国で署名の場合2の署名日から3ヶ月以内)(印紙税法18条)
(5)、印紙税(Stamp Duty)として譲渡価格の0.25%(印紙税法別表62条)支払い、譲渡証明に印紙(Stamp)の添付を取得(印紙税法10条)。その後両者署名(インドで署名の場合)
(6)、印紙を添付した署名済みの譲渡証明を会社に提出(2または4の署名日から60日以内)(会社法56条、2014年会社株式及び社債に関する会社法規則の11条(1))
(7)、譲渡制限株式の譲渡を決定する取締役会決議をしたのち(公開会社なら不要)
(8)、会社は株主の変更を登録可能となります(会社法56条)
5、印紙税の支払い方
印紙税の支払い方には大きく分けて(1)e-stampを利用してオンラインで支払う(2)一定の販売店にて印紙を取得する(3)郵便料金別納印を利用して支払う(Franking)、と言う3つの方法があります。しかし、すべての州でこの方法の全てが利用できるわけではないので、州ごとの運用を確認する必要があります。
また、印紙は州によって扱いが違うところもありますが、原則として6ヶ月で失効します(印紙税法49,50条)。
(1)e-stampについて。インド政府は、Stock Holding Corporation of India(SHCIL)という会社をCentral Record Keeping Agency(CRA)に指名して、インド国内のすべてのオンライン上の印紙税の支払いをするように指名しました。この会社により、利用者の登録や支払いの管理等が行われています。SHCILは Authorized Collection Centers(ACC)を設置し、ACCに含まれる銀行などが徴税にあたることになります。
(2)印紙は、一定の許可を得た商店にて購入することが可能です。しかし、ここでは100ルピー以下のような小さな金額のものや1000ルピーを超えるような高額なものが手に入りにくいという問題があり、使い勝手の悪さは指摘されているところです。また、非正規店での転売も行われており、場合によっては失効した印紙を買ってしまうことなどもあります。
(3)郵便料金別納印(Frank)を利用するには取り扱っている銀行か郵便料金別納印取り扱い機関に申請書を送り、支払いをすることが必要です。これは簡単な支払いができるというメリットがありますが、統一規則がなく、銀行や州によって大きく取り扱いが異なることに注意が必要です。
By Reserve Bank of India / AKS.9955 - Own work From the collection of Arun Kumar Singh, CC BY-SA 4.0, [https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=53559194]
暴落したインド株を爆買いする中国企業に対してインド政府が待った
1、不況の中での中国によるMA対策。
(1)インド中央銀行から、外資流入の新たな規制が発表されました。
4月18日に中央銀行(Reserve Bank of India)から通達が出され、海外直接投資(FDI)ポリシーを変更するということが発表されました。変更の内容は、インドと国境を接する国から、インドに対する投資を全て政府からの承認が必要とするというものです。今まではバングラデシュとパキスタンのみ規制されていたのですが、新たにアフガニスタンや中国、ネパール、ブータンなどが含まれることとなります。直接中国資本を締め出すと言っているわけではないのですが、実質的に今回の規制は中国に焦点を当てたものと言って良いでしょう。
[https://dipp.gov.in/sites/default/files/pn3_2020.pdf]
(2)インドの外資規制概要
インドでは、産業部門ごとにインド国外の居住者が保有して良いインド企業の株式の割合というものが定められています。農業、鉱業の多く、建設業、電気通信業、単一ブランド小売業、サービス業など、多くの場面で100%海外資本の企業が許されていました(自動承認ルート、Automatic Route、といいます)。国外居住者による100%の保有が許されない産業部門としては、民間警備業、航空機産業、複数ブランド小売業、ラジオ、ニュースを含む放送業などがありました。これらの業界では、業種によって海外資本は49%まで、または74%まで、という規制が設けられていました(政府承認ルート、Government Approval Route、といいます)。
インドは自国資本の保護をしすぎる政策から舵を切り、近年は外資を呼び込んで国の経済発展を図りたいという方針を撮っていました。上記の規制は近年徐々に撤廃されていき、自動承認ルートがかなりの部分で主流となっていました。
(3)インド市場は保護の重要性が高い
COVID-19の発生前のインド株式市場は世界中の投資家から大変な注目を集めており、主要な株式指数は大変伸びていました。インドの重要な株式指数はNIFTY 50とBSE SENSEXの二つです。
・Nifty 50(National Index Fifty) とは、ナショナル証券取引所というインド最大の証券取引所の主要50銘柄の時価総額加重平均指数で、インド株式市場の市況を表すのによく用いられるものです。
・BSE SENSEX(Bombei Stock Exchange Sensitive Index)とは、ボンベイ証券取引所というインド2位の証券取引所の主要30銘柄の時価総額加重平均指数で、インド株式市場の市況を表すのによく用いられるものです。
[https://economictimes.indiatimes.com/indices/nifty_50_companies]
今回のCOVID-19を受けて、インドで1日ロックダウンがあったのが3月22日、21日ロックダウンが発表されたのが3月24日ですが、そのときに2016年以来の安値を記録する暴落が読み取れます。
2、中国企業のMA
インドやヨーロッパ、北米でOCVID-19が話題になる1、2ヶ月前にすでにビジネスを一足早く再開したのが中国です。中国が営業を再開する中で3月以降世界経済はビジネスを止めざるを得ず、壊滅的な打撃を受けていました。ヨーロッパや北米、インドでは数多くの優良企業が株価を落とし、資金繰りが危うくなり、果ては倒産という道も見えているところでした。これに目をつけたのが圧倒的財力を持った中国の銀行の海外投資部門です。世界中の株のバーゲンセールの中、積極的に買い増して行ったのでした。
3、ヨーロッパの対策
中国の銀行が、世界中で暴落する株価をみて、ヨーロッパ各国の企業を買収(M&A)するべく、大変大胆に海外投資をしていることが話題になっていました。ヨーロパではスペインやイタリア、ドイツなどが国内の弱った株式市場から中国資本を締め出すために新たな外資規制を導入して、インドもそろそろ導入しなくては、と言われているところでありました。
4、インドの対策
(1)インド最大の民間銀行に中国人民銀行からの買い増し
インドではHDFC銀行の株が中国人民銀行(People’s Bank of China)によって1750万株買い増され、その持ち分が0.8%から1.01%まで上昇したということが報じられました。約500億円が2020年1月から3月の間で投資されたものとみられています。これは、1%以上の株式を有する株主の開示義務によって明らかになったものです。HDFC銀行は、インドの民間銀行では最大規模の優良企業です。政府機関等を除くと、HDFC銀行の株主で1%を超える株主は約7人。その中の1人がPBoCとなったことで、COVID-19渦中での中国資本のインド進出が話題となったのでした。
他にも、中小企業が中国企業によって買収されるのではないかとの危機感から、中小企業保護のための基金が銀行や投資家により結成されるなどの動きがありました。
インドは上記の通り、「インドと国境を接する国」からの海外直接投資(FDI)に関して、全てを政府の承認を要するものとしました。これにより、インド政府は、自国の企業が中国資本によって支配されることを阻止できるようになります。
5、中国初で他の国を経由する投資は対象になるか?
中国以外の国にある企業からの投資でも、‘Beneficial Owner’が中国にいる場合には政府承認ルートの対象となります。’Beneficial Owner’とは、定義が明確にあるわけではありません。ここで、Master Direction をみると、当該企業の50%以上の株式を有する者がこれに当たるという記述が見られます。しかし、持ち分が50%より低くても’Beneficial Owner’に当たる可能性はあります。
例えば、似た規定に、SBO(Significant Beneficial Owner)の申告の規定が会社法89条、90条及び関連規則にあります。これによると、SBOとは、ある企業の株式を直接または間接的に10%以上持つ者が含まれるとされ、それに満たない場合でも’Significant Influence’を有していればその者はSBOにあたると規定されています。
他にもPrevenrion of Money Laundry Actにある’Beneficial Owner’の定義も参考になります。ここでは企業を最終的に保有するか、その方向性を決定する権限を持つ者、または企業を代表して取引を行う者、と規定されています。
このように会社法やPMLAの規定を参考とすると、今回のFDIポリシーの変更における'Beneficial Owner'の中に極めて多くの中国関係者が含まれることがわかります。
投資側は問題ないと考えていてもインドの中央銀行によってこの認定を受けてしまうと罰則が下るということにもなりかねません。この萎縮効果は大きく、結果として中国資本を少しでも含んだ企業によるインド投資はかなり制限されることとなるでしょう。
インドに投資をお考えの企業の場合、自社に中国資本が含まれていないか、また、中国居住者で、重要な影響力を行使する方(役員等)がないか、などの点に着目する必要があるでしょう。詳しいことは会計事務所や法律事務所の方に相談してみるのが良いでしょう。
5月3日までロックダウン延長。4月20日以降の経済活動再開に望み。
1、インドは5月3日まで原則として全土でのロックダウン延長を決定。
4月20日以降は部分的にロックダウンを解除して経済活動を認める方向とすることが同時に発表されました。
3月25日から始まったロックダウンが5月3日まで続くという事で、その期間実に40日間。大変長いですね。僕は高校の時に自宅謹慎を約1ヶ月食らった事があったのですが、この時もメンタルが限界近くまで追い込まれた記憶があります。インド人もそれぞれ苦しんでいる事が日々のニュースから伝わります。
以下の通達の内容を見る限り、コロナの影響の少ない地域ではできる限り経済活動を認めようという政府の意向が感じられます。特にインドは、農業従事者や日雇い労働者に支えられている国なので、この方々への配慮が経済面でも政治の面でも大変重要となるのです。
引き続き頑張りましょう。
4月15日に内務省(Ministry of Home Affairs)が発表した内容から重要そうなものをピックアップしました。(今後変更される可能性はあります)
1、すべての国内・国際移動のための飛行機、電車、バス、タクシー等の交通機関は公営・私営を問わず、原則禁止。
2、学校やスポーツ、学術、娯楽、社会活動、文化活動等の集まりが禁止。
3、葬式や結婚式は地方の警察の指導のもと、原則20人以下で行う事。
4、ホットスポット(COVID-19の感染者が多い場所やクラスターが発生した場所)では厚生省(Ministry of Health and Family Welfare)のガイドラインの元、封じ込めゾーン(containment zone)が設けられ、ここの人の出入りやこの中の人々の活動はより厳格に管理されます。
5、4月20日以降は、州や直轄領ごとに限定的に経済活動等が再開されます。
6、医療施設や医療関係の研究機関は引き続き活動を続ける事が可能。
7、農業分野、金融分野、社会保障分野は原則として4月20日以降再開の方向。
8、学校等は閉鎖するものの、オンライン授業を行う努力義務があります。
9、物品の輸送業務は原則として認められます。
10、印刷、電子メディア、ITサービス、イーコマース、郵便、コールドチェーン、オフィス維持、宿泊業、隔離施設、一定の職人業(各種修理業)の従事者は業務の遂行が認められます。
11、地方での工場稼働、SEZ(経済特区)、EoUs(輸出業を中心とする地区)、医薬品等の必需品の製造会社、食品加工、サプライチェーン、ITハードウェア、鉱業、包装品の製造業、石油採掘精製業、レンガ製造業、等の企業も営業が認められます。
12、公共の場ではマスク着用、ソーシャルディスタンスを保つこと、公共の場での5人以上の集会の禁止、公共の場で唾を吐くと罰金、酒タバコの販売は厳格な規制のもと行う。
13、すべての職場に体温計を置くこと、65歳以上及び5歳以下は原則在宅勤務、
14、外部から労働者を受け入れる場合には交通機関の乗員率を30ー40%で運行すること。
15、職場では6フィート(約1.8メートル)の距離を取ること、エレベーターはサイズによるが、2人または4人で利用すること。
16、移動の際には、できる限りAarogya Setu というアプリ(GPSとBluetoothでコロナ患者との接触等を管理するアプリ)を利用すること。
[http://164.100.117.97/WriteReadData/userfiles/15.04.2020%20Revised%20Consolidated%20Guidelines.pdf]
2、2020年4月15日のコロナウィルスの状況です。
日本、インド共にとどまる気配が全くありません。
インドの状況です
[https://www.worldometers.info/coronavirus/country/india/]
日本の状況です
[https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/]
インドでムスリムの集会により感染爆発。ロックダウン延長も。
1、4月11日最近のインドニュースメモ
インドでは、3月後半のムスリムの集会を経て、感染者が爆発的に増加したこともあり、大変な騒ぎとなっています。モディ首相はロックダウンを延長すると言明はしていませんが、4月14日にすぐに解除とすることは憚られるという見解を示しました。オリッサ州、パンジャーブ州など複数の州の知事がロックダウンを延長することを表明しました。
モディ首相が威信をかけて行った世界最大規模のロックダウンは、インドの人口を考えるとかなり上出来ではあるものの、多くの人にとって予想外の感染数の増加を記録しています。
ロックダウンで国民がストレスを感じている中、怒りの矛先がモディ首相に行くのか、ムスリムに向かうのか、難しいところです。
2、最新の世界の感染者数の情報です。このブログの最初の方に比べて縦軸の数値がおかしくなっています。1918年から1920年で流行ったスペイン風邪の頃から衛生状態や人口など、多くの要素が変わっていますが、これと同程度の壊滅的打撃が訪れる可能性は十分にあります。スペイン風邪は3回の周期でやってきたと言います。まだ1回目の周期であることを考えると、背筋が凍る思いです。
[https://www.worldometers.info/coronavirus/coronavirus-cases/]
[https://www.worldometers.info/coronavirus/country/india/]
[https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/]
3、最近のインドのニュースピックアップ
4月4日、#BanTikTok というハッシュタグがツイッターのインド界隈でトレンド入りしました。最近になって、ムスリムと思われる人が、モディ首相のロックダウンをあざ笑うかのような動画を複数投稿したことで、ヒンドゥー教徒達が、これを国家への反逆の扇動(sedition)であるとして批判しているようです。
デリー警察は、中東やパキスタンから流入するこのような動画等が、ヒンディー語で拡散されていることを重くみて、逐次削除や、アカウントの削除、場合によっては必要な法的措置をして行くとのことです。
Tik Tok はインドでは毎月1.2億人以上がアクティブに利用しており、2019年にはインド全土で7.5億時間が費やされました。Tik Tok は中国の次にインドで利用者が多く、特にインドのTear2,3の都市での利用者がとても多いという特徴があります。2019年には、Tik Tokが違法な動画の温床となっているとして、インドで一時期ダウンロード禁止となりましたが、再びこの議論が再燃しています。しかし、Tik Tokをインドで禁止すると50万ドル分の損失が出るというTik Tok側の主張もあり、調整は難航しています。
これと関連して問題となったことは、TikTokがアプリユーザーの多くの情報を収集していることが話題となっています。TikTokは、アプリを四王する人の他のアプリのインストール状況、タイピングをした情報、位置情報、機種、キャリア、タイムゾーン等の情報を収集するということが明らかになり、アメリカで話題になりました。アメリカでは、全ての軍隊の従事者の機械から削除するよう要請がされました。これに加えて、アメリカでは全ての公務員に対してアプリを削除する法律を検討中です。
4月4日、Yes Bank CEO の創設者のRana Kapoor氏がコロナウィルスに感染する恐れがあるため拘留されたくない旨の誓願書をムンバイのPrevent Money Laundering Act(PMLA) court (資金洗浄防止法法廷)に提出したものの、棄却されました。ラナ・カプール氏は、資金洗浄をしたとして、Enforcement Directory(取締局)に逮捕されました 。
ラナ氏は、イエス銀行のChief Executive Officer(CEO)(最高経営責任者)であったときに、娘たちの会社に便宜を与えるため、家族が関係する78の会社に合計3000億ルピーを融資し、そのうち2000億ルピーが不良債権になったとのことです。不良債権とは、90日以上返済が遅れた債権のことを言います。
ラナ氏の弁護士によると、これらの融資は返済が不可能になったわけではないことや、イエス銀行に利益をもたらしているとして、PMLA法違反はないと主張しています。*1
Tablhighi Jamaatというムスリムの集会が3月後半にあり、これにより大量に感染者が増加しました。Tablhighi Jamaatとは、イスラム教徒の宣教師の間で取り入れられている活動で、預言者ムハンマドがやっていたとされる修行を信者が集まって実施するというものです。
3月に、数週間にわたって二ザムディンという、南デリーのイスラム教のモスクで信者が集まってこの修行を行なっていたところ、3月22日に1日の全土ロックダウン、3月24日に21日間の全土ロックダウンは発表され、モスクの内部に多くの信者が取り残されました。この集会は3月13日にデリー政府が二百人以上の人による集会を禁止していたのにもかかわらずなされていたということで、ロックダウン後も出頭するのが難しかったものとみられています。3月にデリー政府の禁止に反してこれに出頭した人は9000人に上るとみられています。集まった人の中には、マレーシアやインドネシア等の外国から入国して、入国した後の14日間の自主隔離に違反して参加した人も含まれていました。
この集会に参加していた人たちは、その後、ロックダウンの規制をかいくぐり、インド各地のモスクを転々として、タミルナド、テレンガナ、カルナタカ、ジャムーカシミール、アッサム州等、インド全土に広がりました。4月6日の保健省の発表によると、インドで確認された4069人の患者のうち、3分の1以上の1400人以上がこのムスリムの集会の関係者から広まったものとみられています。また、4月6日には、インドの15の州に広がる25000人の参加者またはその接触者に対して隔離を命じました。*2*3
デリー警察は、携帯電話の位置情報を解析してこの集会に参加した人を割り出し、各州の警察と協力して参加者を追跡しています。この集会を指導した一部の宣教師について、デリー警察は、疫病災害法3条(法律違反による罰則)、刑法269条(疫病を広めるに至る不注意な行動)、270条(疫病を広める悪質な行為)、271条(隔離に関する規則への違反)、120b条(犯罪の共謀に対する罰則)、等に関する法律に基づいて、捜査を進めています。各州でこれに出頭した人の逮捕者が出ています。4月6日現在、各地に広がった集会参加者が未だに出頭していないとみられており、ハリヤナ州やパンジャブ州等の各州の政府はこの集会に参加した者に対して出頭を呼びかけています。
公共のテレビは直接的にイスラム教が悪いとは言わないものの、今回の集会に参加したムスリムを全力で非難するという論調のように感じられます。ヒンドゥー教徒とムスリムはインドでは仲が悪いのだと改めて実感しました。ただ、インドには歴史的にムスリム王朝がたくさん存在したのも事実。戦後、パキスタンとバングラデシュがイスラム教国家として独立しましたが、インド国内からムスリムを排除することはできません。日本では見られない政治や宗教の動向が大変勉強になります。
今回のような問題は日本やアメリカだと、ムスリム側が信教の自由を盾に政府と全面的に対立する構図が容易に想像できます。信教の自由に対して公共の福祉による制約が課せられる場面です。ムスリムの集会に参加した人を逮捕するという点で信教の自由に強度な制約が課せられているけれど、コロナウィルスによる人の死を防ぐという目的は大変重要。難しい憲法訴訟が発生しそうです。法律や憲法が違うので比べにくいですが。インドの判例の蓄積に期待しておきます。
東京五輪1年後へ。悩ましい代表選考(特に柔道)。
先日、3月30日に東京オリンピックの日程が2021年7月23日開催に決定しました。
2020年秋や2021年春にするという案もあり、事態が不透明だっただけに、日程が固まったのは一安心ですね。
ここで、各競技団体にとって一番の悩みどころは代表選考をどうするか、ですね。
4年に一度のオリンピックに出られる人は、大変限られているし、その選考はどの競技も熾烈を極めます。僕は個人的に柔道経験があるので柔道の選考はずっと追っていたのですが、大変悩ましい問題が生じたと感じています。
毎回のオリンピックでメダルを量産する柔道。その代表選考は毎回想像を絶するハイレベルなものとなります。多くの選手が口にするのが、オリンピックは特別、というもの。世界選手権やグランドスラムという国際大会が毎年行われ、その年の世界チャンピオンは決まるのですが、2019年の世界選手権で優勝した日本人選手は喜びに浸るのもつかの間、みな「東京オリンピック」という目標を掲げます。
また、井上監督も「金メダルを取れるかどうかという観点で調整をしている」という旨の発言をしております。発祥国として金メダルを期待されるプレッシャーをずっしりと感じている様子がわかります。しかし、世界選手権で勝てたからといってオリンピックで勝てるわけではないことは中村美里選手、海老沼匡選手、長瀬貴規選手など、多くのケースで見られました。オリンピックの重みはどの選手にとっても段違いに重いです。
日本では競技人口が16万人いると言われ、大変選手層が厚いのが日本柔道界です。そして、どの選手も厳しい減量や国際大会をいくつも乗り越えて世界ランキングを男子は22位以内女子は14位以内にキープしていないといけないという厳しい世界です。毎年有望な選手が頭角を顕すし、長期間の怪我で戦線離脱をするとランキング上位復帰は相当難しくなります。
各選手が心身のレベルを極限状態にもっていって戦うため、選手の入れ替わりは大変激しいです。
リオオリンピックでは、60kg級の永山竜樹選手と高遠直寿選手、66キロ級では海老沼匡選手と阿部一二三選手、73キロ級では大野将平選手、中矢力選手、秋本啓之選手、100キロ級では羽賀龍之介選手とウルフアロン選手、100キロ超級では原沢久義選手と七戸龍選手、女子48キロ級では近藤亜美選手と浅見八瑠奈選手、52キロ級では中村美里選手と志々目愛選手、70キロ級の新井千鶴選手と田知本遥選手、78キロ超級の山部佳苗選手と田知本愛選手など、世界トップクラスの選手たちがしのぎを削り、代表が決定しました。
リオオリンピックでは阿部一二三選手やウルフ選手など勢いのある若手が台頭するのを振り切って代表に内定した選手もいました。決め手はそれまでの国際大会での実績などを勘案するというものでした。
2017年以降は多くのオリンピック内定者が日本のトップ選手の座を若手に譲り始めました。
このような熾烈な争いを考慮して、全日本柔道連盟は東京オリンピックという負けられない大会に向けて、選考の基準のできる限りの明確化と外国人対策のための早期化を決めたのでした。
このような流れを受けて、2019年の大阪のグランドスラムや世界選手権、選抜体重別など、複数の大会を選考のマイルストーンとして発表し、それに則って代表が厳正に決定されました。選考では、国際大会での成績、直接対決の結果を考慮して、強化委員会の3分の2の賛成多数でやっと内定という、精密な審査がされます。先日、2月27日に14階級中13階級で代表の内定が出揃ったばかりでした。
この代表発表の際の井上監督の涙は、落選した選手のレベルの高さへの敬意と苦渋の決断を迫られる心労を示すものでした。
動画は[https://www.youtube.com/watch?v=sPBoxpiCF5Q&t=1437s]
4年間の激闘に終止符が打たれ、後はチーム日本で一丸となって戦う、という状況になったところで、この度のコロナ騒動が大規模化し、最終的にオリンピックの1年延期が決められたのでした。
再選考となると、代表内定済みの選手と落選していた選手とでは、気持ちの切り替えの面で大きな差があります。落選した選手には奇跡的にもう一度チャンスが来たという前向きな気持ちが生まれますし、代表選手には4年をかけて一度手にした強力な資格を剥奪されるという、大きな心理的ビハインドがあります。まだ決まっていない66キロ級はもとより、高藤選手(26)と永山選手(24)、橋本壮市選手(28)と大野将平選手(28)など、選考が難航した複数の階級で代表選手が入れ替わってもおかしくないと思われます。
リオオリンピック以降、疑義を挟まない選考を目指して今回のような選考とした全柔連の方々の苦心を思うと、新たな選考をし直すというのは想像を絶する苦悩だとは思われます。しかし、120日後から480日後となった大会に関して、選考を変えないというのは、実力を反映していないため、今までの選考の方針から逸れてしまうものと思われます。代表内定した選手が再び代表になる可能性は十分にありますし、疑義を挟まない選考というのがここ数回のオリンピックでの課題の一つでもありました。
実際、2012年のロンドンオリンピックの選考では浅見八瑠奈選手がそれまでの世界選手権で2回優勝していたものの、緊張のため体重別の「1週間前から寝られなかった」という発言が考慮されてオリンピックの代表が福見友子選手に決定した(福見選手はロンドンオリンピックではメダルを獲得できずに終了)、という出来事や、リオオリンピック前の2016年の選抜体重別で海老沼匡選手が当時大学1年生であった阿部一二三選手に惨敗したものの、国際大会での実績を考慮されて内定した(海老沼選手は銅メダルを獲得)、という出来事がありました。五輪の選手選考の透明化の流れは来ており、これは柔道に限らず、競泳や陸上など、多くの競技で話題となっていることでした。
今回、オリンピックが1年という大幅な期間延期になったことで、全柔連の判断に注目が集まります。
写真は日本人の知り合いに紹介をいただいたインドの柔道アカデミーの看板です。ハリヤナ州のグルガオンという街の離れに、地下の道場を設けて練習しています。練習は週6日、うち2日は二部練です。参加した時は警察と軍隊の人が多く、20代前半の人ばかりでした。国際大会経験者もちらほら。練習はかなりハードです。ロックダウンが明けたら稽古に行く予定です。
【非常事態宣言出すのか出さないのか日本】
コロナウィルスに関して、日に日に緊張感が増しています。日本もさすがに本腰を入れ出しています。
日本でパンデミックが発生した時は医療が追いつかなくなる不安があるということで、非常事態宣言を出すことが議論されています。
日本の非常事態宣言についてインドの状況を参考にしつつまとめてみました。まずは感染状況からです。
[https://www.worldometers.info/coronavirus/country/india/]
[https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/#infection-status]
1、非常事態宣言とは
一般的に、非常事態宣言や、緊急事態宣言とは、どのようなことをいうものなのでしょうか。
これには、定義が複数あるところですが、簡便化のため、以下のように定義します。すなわち、「立法府の判断を得ることなく、内閣府が法律上に明記されていない私権の制限を課すことを認める宣言」です。
日本では、三権分立の制度が取られていて、原則として、私人の権利(身体的自由権や財産権等)を制限するには、立法府(国会)の承認を経た法律上の根拠が必要です。内閣府(内閣総理大臣や地方自治体等)はこの法律に規定のない私権の制限を課すことができないのが原則です。
しかし、一定の緊急事態には、立法府の判断を仰ぐ時間的余裕がないため、内閣府に既定の法律以上の権限を認めることが必要です。このような三権分立の例外を認めるためには、私権を保護するため、状況を極めて限定し、そのような宣言発令の場面について法律に明記しておくことが必要です。
現在の日本では、災害対策基本法における災害緊急事態の布告(105条1項)(重大災害時に一定の物資の供給等を国が管理できるようにするもの)、警察法に基づく緊急事態の布告(73条)(緊急事態には内閣総理大臣が警察に一定の統制権を行使できるようにするもの)、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく新型インフルエンザ等緊急事態宣言(32条1項)などがあるといわれています。
今回問題となっているのは一番最後のものです。以下、詳細についてみてみます。
2、新型インフル法に基づく緊急事態宣言
最近、日本で議論されている緊急事態宣言というのは、
新型インフルエンザ等対策特別措置法の32条によって発令される「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」のことです。
(参考法令)
(新型インフルエンザ等緊急事態宣言等)
第三十二条 政府対策本部長は、新型インフルエンザ等(国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるものとして政令で定める要件に該当するものに限る。以下この章において同じ。)が国内で発生し、その全国的かつ急速なまん延により国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼし、又はそのおそれがあるものとして政令で定める要件に該当する事態(以下「新型インフルエンザ等緊急事態」という。)が発生したと認めるときは、新型インフルエンザ等緊急事態が発生した旨及び次に掲げる事項の公示(第五項及び第三十四条第一項において「新型インフルエンザ等緊急事態宣言」という。)をし、並びにその旨及び当該事項を国会に報告するものとする。
一 新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間
二 新型インフルエンザ等緊急事態措置(第四十六条の規定による措置を除く。)を実施すべき区域
三 新型インフルエンザ等緊急事態の概要
3、非常事態宣言が出される条件と内容
国民の生命及び健康に著しく重大な被害を与えるおそれがあるインフルエンザ等の疾患が日本で発生して、
国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすそれがある
事態が発生した場合に政府によって発令されます(32条)。
4、政府が講ずることができる私権の制限日本vs インド
日本
(1)個人の外出制限
外出しないことを「要請」できます(45条1項)。違反しても罰則はありません。
(2)学校、保育所の使用制限
利用停止を「要請」「指示」できます(45条2項3項)。「指示」したことは政府が「公表」できます(45条4項)。違反への罰則はありません。
(3)イベント開催の制限
イベント等を開催しないことを「要請」できます(45条1項)。違反しても罰則はありません。
(4)医薬品、食料品等の保管
政府が保管や売渡しを「要請」できます(55条)。違反者には懲役6ヶ月以下又は罰金30万円以下(76条)の罰則が課せられます。
(5)臨時の医療施設等のために土地や建物を強制使用
所有者に正当な理由がない限り、政府が強制的に施設を医療施設に転用できます(49条1項2項)。拒むと罰則として罰金30万円以下を課せられる可能性があります。
(1)個人の外出
不要不急の外出を禁止し、違反者は禁錮1ヶ月以下又は200ルピー以下の罰則を課されることがあります。
(2)学校、保育所
閉鎖できる。違反者には「相当な対処」ができます。
(3)イベント開催
禁止できます。違反者は懲役6ヶ月又は罰金1000ルピー以下又はその両方を課されることがあります。
(4)医薬品、食料品等の保管
政府が流通を管理できます。
(5)臨時の医療施設等のために土地や建物を強制使用
政府が管理できます。
上記の根拠はインドの刑法百八十八条、刑訴法百四十四条、1897年の伝染病災害法、2005年災害対策法、などです。コロナウィルスが人を死亡させるということを重く見て、場合によっては殺人罪(刑法三百七条)を問われる可能性もあります。インドの法律に関しては全てを把握しきれてはいないので上記以外の法律上の罰則が課せられる可能性もあります。連日、中央政府(財務省、内務省、厚生省等)や各地の州政府から多くの通達がなされ、ウィルス封じ込めへの迅速な対応が取られています。これに基づき連日、逮捕者や自動車の没収、道路の封鎖、等はなされています。
5、まとめ
結論からすると、日本では、新たな法律が新たにできない限り人々に強制力をもった外出制限を課したり、道路の封鎖、電車の運行停止、飲食店や工場の稼働停止命令等はできません。
現状でできることといえば、各都道府県などの自治体ごとに人々の外出自粛の要請を発することです。この法律の規定の中でできることは、街に警察や自衛隊等が出て行き、しつこく説得を試みるということくらいでしょう。この場合も、有形力の行使は許されません。
一方、飲食店やイベントに関しては、中止等の「要請」に違反した運営者等を政府が公表できます。これにより、企業イメージを大切にする運営者にはそれなりに強い強制力が期待はできます。
4月1日現在、首相は非常事態宣言を「出す状況ではないと考えている」と述べました。一方、日本医師会、体力のある企業が多く属する経団連や経済同友会は宣言をするべきと表明しました。中小企業が多く属する日本商工会議所は業績への影響が大きすぎるとして、出すべきでないという方向です。
イタリアやロシア、スペイン等でも強制力のあるロックダウンは行われていますが、インドでは現在、13億人が、罰則により担保された外出禁止令を21日間受けています。この規模での外出禁止令は、人類史でもなかなかないレベルのものといってよいでしょう。日本と比べるとインドの思い切りの良さがよく伝わります。
2020/3/28までのインドのコロナ関連情報メモ
2020年3月28日17時現在、WHOによると、インド国内でのコロナウィルス感染確認者は909人(インド人862人、外国人47人、死者19人)とのことです。現在ロックダウン21日中の4日目ですが、政府は次々と新しい政策や法律を打ち出しています。政府のコロナ対策の政策等は別の記事に回すとして、今のところまでで目についた記事を並べてみました。
1、ここまでの主要なインド政府の対策
3月3日 インド政府は、イタリア、日本、韓国、イランの国民に対しては新規ビザの発給停止及び、既に発給されたビザに関しても、一度国外に出ると効力停止とする発表をしました。
3月4日 インド政府は、すべての国からの入国者に対してコロナウィルスを保有していないかの検査をすることを発表しました。
3月11日 内閣官房は1897年の伝染病災害法2条を発動すると宣言しました。これは、危険な伝染病がインドや各州で流行していると州政府や中央政府が判断して、かつ、従来の法律では十分に対処できないと判断した時には、私人に対して、一定の対策を取ることを強制したり、一時的な規制を制定したりできるというものです。これが発動されると、中央政府は鉄道や船、飛行機等の移動を制限できることとなります。
これは過去には、鳥インフルエンザやデング熱等が流行した際に発動されてきました。
同じ3月11日、3月13日のGMT12時より、4月15日まで、就労ビザや一定の大使館ビザ等を除く全てのビザの発給を停止することを発表しました。就労ビザが対象から外されたのは、インドで働く日本人には救いとなりました。また、2月15日以降に外国からインドに帰ってきたインド国民は14日間隔離されることを発表しました。
3月19日 モディ首相は演説を行い、3月22日の朝7時から夜9時まで、警察や病院等の必須インフラ業務に関わる者以外の全国民に外出禁止を要請しました。そして、同時に17時に全国民が屋上やバルコニーに出て、仕事をしている必須業務の方への感謝と激励の気持ちを込めて5分間、鈴を鳴らしたり手を叩くように要請しました。
パンジャブ州で、公共交通機関を全て停止することが発表されました。
3月24日 モディ首相は3月24日20時に演説を行い、3月25日午前0時より、21日間、インド全土において外出禁止令(Lock Down)を発令することを宣言しました。この演説では「Social Distancing(人々の距離を取ること)」がコロナウィルスの拡大を防ぐ唯一の手段であると強調しました。他にも、経済的コストよりも人命が大事だと強調し、「この21日を乗り越えることができなければ我々は21年間分後退してしまう」と訴えました。
2、ロックダウンに関するインドのニュースをピックアップしてみました。
インド各地で混乱が深まっている状況が伝わります。
3月18日、政府は、Dearness Allowance(公務員への親愛手当 )を12%から17%に増額することを決定しました。
3月22日以降、マハラシュトラ州、タミルナド州、ラジャスタン州など、多くの州で刑事訴訟法144条の適用が発令されました。これは、3人以上の集会があれば、人の生命等を守るため、治安判事が相当な命令を発令したり、解散させたりできるというものです。
3月24日に、ロックダウンに従わなかった者の自動車やバイク2480台がハイデラバード交通警察によって没収されました。
[https://newsmeter.in/hyderabad-traffic-police-seize-2480-vehicles-for-violating-lockdown/]
3月25日5pm - 3月26日5pm
間で453人がロックダウンを破ったとしてKolkata Policeに逮捕されました
3月26日、パンジャブ地方では刑務所での感染拡大を防ぐため、懲役7年以下の者6000人を仮釈放
3月26日には、デリーで、40歳の男性が北東系の女性に対してバイクの上から「コロナウィルス」と呼びかけて食べ物を吐きかけたということで逮捕され、バイクを没収されました。
3月27日、飛行機の国内線の運行休止は4月14日まで延長されました。(Directional General of Civil Aviation)(民間航空の総督)
3月27日 Jammu & Kashmir州では、Ranbir Singh Pura Policeが、消えるまで15日かかる’corona lockdown violator’というスタンプを違反者に対して押して行っています。
3月27日 政府は”Pradhan Mantri Garib Kalyan Anna Yojana”という食糧計画を決定。コメまたは麦5キロおよびpulse(豆)1キロをすべての家庭に配ることに決定。予算は約2.4兆円。
3月27日、マハラシュトラ州、ウッタルカンド州、ハリヤナ州、の州知事に対して、ウッタルプラデシュ州から来た出稼ぎ労働者に対して、食料と住居を提供するよう呼びかけました。
[https://twitter.com/ANINewsUP/status/1243477870342590465]
3月27日、ウッタルカンド州では8人が届け出なく結婚式を行おうとしていたということで、逮捕されました。
[https://twitter.com/ANI/status/1243441090016858112]
3月27日、マハラシュトラ州では、3人の人がSNSにフェイクニュースを流したとして、逮捕されました。
[https://twitter.com/DynamiteNews_/status/1243435587316715521]
3月27日、ビハールでは、警察官3人がジャガイモを運ぶトラックに向けて銃を発射して呼び止め、5000ルピーの賄賂を要求したとして逮捕されました。
3月27日、全ての商業銀行等は、3月1日時点の債務者たちのあらゆるローンの支払いを猶予することを許可しました。
[https://twitter.com/samacharnews_in/status/1243413802026070023]
3月28日、ケララ州は他州からの出稼ぎ労働者のために4600箇所に14万人分のキャンプを設置しました。
[https://inquest.org.in/novel-initiative-kerala-sets-up-4600-camps-for-144-lakh-migrant-labourers]